残業単価の出し方:給与明細のどこまで含める?

給与明細の「役職手当」を見て、「これも残業単価に入るの?」と手が止まったことはありませんか。手当は名前だけでは分けられません。誰に、何を基準に、いくら支払う手当なのかを賃金規程と見比べながら、あなたの明細から1時間当たりの賃金を組み立てます。

編集:情報の確認・更新方針

今回見直した点:除外できる7項目と月給換算式について、e-Gov・厚生労働省の根拠と確認範囲を追加しました。 サイト全体の変更履歴

給与明細では、金額と支給条件をセットで見る

項目名だけで除外を決めず、賃金規程に書かれた「誰に・何を基準に・いくら支払うか」まで確認します。

架空の給与支給明細書。勤怠、支給、控除を帳票形式で並べ、総支給額から控除合計を引いた差引支給額を表示。番号1は基本給と役職手当を計算に残す候補、番号2は住宅手当と通勤手当を支給条件の確認が必要な項目、番号3は賃金規程との照合を示している

給与明細の画像を大きく見る(別画面)

明細の項目名だけでは判断できません。実際の計算では、自分の給与明細と賃金規程に書かれた支給条件を照らします。

計算に残す手当を、支給条件から決める

会社が支払うお金のうち、基礎時給の計算から「除外してよい」と法律(労働基準法および施行規則)で限定列挙されているものは以下の7種類のみです。

法律上の除外項目

計算から除外できるのは、次の7種類です

  • 家族手当扶養家族の数に応じて支給されるもの
  • 通勤手当通勤距離や運賃に応じて支給されるもの
  • 別居手当単身赴任などで支給されるもの
  • 子女教育手当子どもの学費等に応じて支給されるもの
  • 住宅手当家賃・ローン等の額に応じて支給されるもの
  • 臨時に支払われた賃金結婚手当など
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金賞与・ボーナスなど

この説明の根拠 e-Gov法令検索「労働基準法」第37条第5項「労働基準法施行規則」第21条 法律に記載された家族手当・通勤手当と、省令に記載された5項目を合わせた7項目を確認できます。厚生労働省の割増賃金の計算方法では、名称ではなく実際の支給条件で判断する例も示されています。(2026年7月25日確認)

計算に残す賃金を、1時間分へ直す

残業代の計算元となる「基礎時給」は、先に確認した賃金を、会社の月平均所定労働時間で割って求めます。給与明細の例と同じ数字で追ってみます。

給与明細の数字を式へ移す

基本給と役職手当を合計し、160時間で割る

計算に残す賃金
基本給250,000円 + 役職手当20,000円
月平均所定労働時間
160時間

270,000円 ÷ 160時間 = 1時間あたり1,687.5円

この金額に1.25などの割増率を掛けます。実際の端数処理は、勤務先の賃金規程や計算明細も確認してください。

計算式の根拠 厚生労働省「割増賃金の計算方法」 月給を1年間における1か月平均所定労働時間数で割る考え方と、端数処理の取扱いを確認できます。(2026年7月25日確認)

自分の給与明細で計算してみる

基本給だけを使った場合と、支給条件を確認して手当を含めた場合を比べます。

給与明細を使った例

総支給30万円・所定労働時間160時間の場合

  • 基本給:23万円
  • 役職手当:4万円
  • 皆勤手当:1万円
  • 通勤手当(実費):2万円

基本給だけで計算した場合
基本給23万円だけを使うと、
23万円 ÷ 160時間 = 基礎時給 1,437円

手当の支給条件を確認した場合
この例では実費の通勤手当(2万円)を外し、役職手当と皆勤手当を含めます。
(30万円 - 2万円) ÷ 160時間 = 基礎時給 1,750円

基礎時給だけで1時間あたり300円以上の差基本給だけで計算せず、手当の支給条件まで確認する理由です。

計算した単価を、明細に戻って答え合わせする

給与と所定労働時間を確認できたら、入力した数字から一般的な残業代の目安を確認できます。 残業代の目安を計算する

手当を含めるか迷ったとき

交通費(通勤手当)は除外してもいいですか?

実際の通勤距離や定期代に応じて支払われる通勤手当は、除外賃金に当たる場合があります。一方、通勤の有無や距離に関係なく全員へ一律支給される部分は、名称だけで除外できません。賃金規程の支給条件を確認してください。

固定残業代(みなし残業手当)は基礎賃金に含めますか?

有効な固定残業代(残業代の先払いとして機能しているもの)であれば、基礎賃金からは除外して計算します。ただし、有効性が認められない「名ばかり固定残業代」の場合は基礎賃金に組み込まれ、残業単価が跳ね上がるケースがあります。

会社の計算式が『基本給 ÷ 173時間』となっていますが正しいですか?

基本給以外に支払われている手当がある場合、計算に含める賃金が不足している可能性があります。また分母の173時間も自社の年間休日に基づく正しい所定労働時間でなければなりません。

あわせて読みたい

手元の資料と働いた状況に近い記事から、必要な条件を一つずつ確かめられます。

給与明細を確かめる 時間・単価・支給額のどこが違う? 勤怠と給与明細を並べ、残業代の掛け算を順番に照合します。 記事を読む 勤務時間を調べる 月平均所定労働時間は173時間でよい? 就業規則と会社カレンダーから、自分の会社の時間を確認します。 記事を読む 残業時間の基本 定時後のどこから割増になる? 1日8時間・週40時間を基準に、所定時間外と法定時間外を分けます。 記事を読む

参照した資料

本文の確認に使った公的資料です。リンク先の更新日や適用範囲もあわせて確認してください。

最終確認日:2026年7月25日
情報の確認・更新方針訂正を連絡